スキャナのサイズより大きい作品の電子化

大胆にも、当店の重要技術である「スキャナの読み取りサイズより大きい作品の電子化」の工程を公開します。とは言え、特に難しいことをしているわけではありません。重要なのは技術ではなく、改造したスキャナと長い定規だけです。

 作品の固定

DSCN2236作品はドラフティングテープ(製図用紙を製図板に止める弱粘着のテープ)などで作業台に固定します。

書道用紙の場合、このテープでも粘着力が強い場合がありますので、マスキングテープは避けた方がよいでしょう。

DSCN2235作品の余白がない場合、展覧会からの返却で、すでに裏面に剥がし跡があるなど、ある程度のダメージが許容される場合は、ごく細い幅の両面テープ、という選択肢もあります。

シワは影になって黒く写り込み、画像処理時の作業が増えますので、可能なら裏打ちなどでシワをのばします。

DSCN2246作品の横に、作品に並行になるように定規を固定します。作品と定規の位置関係が固定されるのであれば、方法は問いません。

スキャナは、定規をスキャンするなどして、スキャン面から4辺それぞれの筐体までの寸法を把握しておくとよいでしょう。

DSCN2250当店にある表装に使う定規はアクリル製で、厚さ10mm、長さ1400mm以下のものは幅70mm、それより長いものは幅80mmです。中央部に数カ所1.2φの穴を空けました。ロングピンの画鋲で作業台に固定できます。ロングピン画鋲も道具ですので目立つ色が欲しいのですが、クリア以外のものはなかなか売っていません。

スキャン

DSCN2252今回は縦横2回ずつ、合計4回のスキャンが必要です。まずは定規にあててスキャンします。作品の上側からスキャンし、下方向にずらしてもう一度スキャンします。

DSCN2254横方向に必要な分だけずらした位置に、はじめに設置した定規に平行にもう一本定規を置きます。今回は200mm程度ずらせば全体をスキャンできそうでしたので、70mm幅の定規を3本スペーサーとして置きました。表装用定規の平行はかなり正確で、ノギス精度(誤差1/20mm以下)はあります。

データの保存

スキャンしたデータは可逆圧縮(画像処理ソフトのオリジナルファイルなど)で、わかり易い名前(作品名+2桁の通し番号など)で保存し、ひと通りスキャンし終わったあとは読み取り専用の設定をします。画像合成色調補正階調補正などはここからコピーしたファイルで行うと、失敗しても最悪、スキャンし直す必要はなくなります。

オリジナルにより近づけた印刷のためには、作品はテストプリントまでお預かりしますが、書作品など、グラデーション部分がなく、それほど階調補正が重要でない場合、データの保存が終われば、その場で作品をお持ち帰りいただくことも可能です。

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