軸棒削り機

軸棒と軸先掛軸の棒は、杉の丸棒の先に銘木・焼き物・樹脂などでできた「軸先(じくさき)」を接着した作りになっていて、これを掛軸に取り付けます。掛軸の取り付け部分は、上下とも、表の部分と裏の部分に分かれた、横から見ると「Y」の字のようになっていて、両面から巻き付ける構造になっているため、基本的に長さの調節はできません。高さのある作品をご注文の際は、天井の高さにご注意下さい。

軸棒 軸先軸先は中心部に穴が彫られていて、取り付けるには丸棒を凸型に削る必要があります。

穴の直径は素材によってさまざまで、同じ素材でも微妙な差があるときもあります。

201509071131そのために過去に製作したのが写真の治具で、日立のM6と言うトリマを取り付けて使います。

トリマというのは、30,000RPMという超高速回転をする刃物で木材を削り、溝を掘ったりフチを削ったりする電動工具です。同じ刃物を使う電動工具でも、より彫刻に適した構造のものをルーターと呼ぶようです。

M6トリマで切削2代目のこの治具は、先代の経験を生かして改良し、短時間で正確に削り出せるので便利に使っておりましたが、トリマは、不要部分を全ておが屑に変換するため、大量の削りカスが飛び散ります。以前は、このような作業ができる場所が借りられていたのですが、土地の所有者がかわり、その場所が使えなくなってしまいました

NCM_0312丸棒を、ぐるりと一周、必要な深さまで鋸を入れ、不要部分を割り取るのが伝統的な方法ですが、木目がまっすぐとは限らないため、あまり精度の良い作業はできません。

そこで苦し紛れに製作したのが写真の治具です。左側で、バーを貼り付けた専用のノコギリで一定の深さに切り込みを入れ、大きめに割り取ったのちに、右側のカンナ部分で目的のサイズに削って合わせよう、との目論見です。鉋は手前の部分を支点に可動し、先の部分にスペーサーを入れて一定の深さに削れるような構造にしてあります。

残念ながら、ノコギリ部分、カンナ部分とも、精度の良い作業はできませんでした。同じセッティングでも、徐々に削った場合と、一発で目的のサイズにしようとした場合とで寸法が違い、削り過ぎることが多く、ただでさえ手数がかかる上に修正のために時間をとられます。精度が悪い上に効率も悪いというシロモノでした。

カンナは、基本的に木目に平行に動かすものですので、木目と直角にはを当てるこの作りでは問題があるのでしょう。これ以上の改良の発想が出ませんでしたので、何か別の工夫はないかと考えました。電動工具が使える作業スペースが確保できれば、趣味の工作などもいろいろできるので便利ですが、家賃の支出は、いまの経営状況では現実的ではありません。

透明カバー額装した際の余りのアクリルの切れ端がふんだんにある事を思い出し、カバーを付けて掃除機に吸わせてみたらどうかと思いつきました。

透明カバー当初、左側と、正面+上面のL字のみで右側は解放されていたのですが、トリマからの、削りカスを吹き飛ばすための風の方が掃除機の吸引力より強力で、右側にカスが吹き飛ばされ、そこそこ汚れましたが、カバーがまったくなかった状態より、はるか良好です。吸引力が不足していても、カスの多くがカバーの中に収まってくれればと、アクリルに丸穴を空け、右側のカバーも製作しました。

掃除機に吸わせる吸引力の不足は掃除機のホースに亀裂のあったためもあり、修理のためホースを短く詰めたところ、全てではありませんが、カスをよく吸ってくれるようになりました。

正面+上面のL字型のカバーはネジ3本で取り付けてありますが、掃除や、調整のために刃物の「出」を測定する必要から、ネジは穴でなくスリットで止めることにしました。ネジを全部外すのではなく、ある程度緩めればカバーが外れるので、我ながら良いアイデアだったと思います。

廉価な掛軸では、半切用にあらかじめ軸棒をまとめて削ってあるのですが、基本的には掛軸は作品の大きさに合わせるものですので、その都度軸棒を寸法に合わせて削らなければなりません。ここ3年ほど、面倒な思いをして削っておりましたが、これで効率的に、しかも精度良く作業ができるようになりました。

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