簡易撮影スタジオ

NCM_0291掛軸は、布と紙で構成されていながら、「板」のようにまっすぐ下がるのが「技術者」としての表具師の理想ですが、実際は素材や腕前により「反り」」 や「ゆがみ」が発生します。撮影時の光源の状況によっては、それが強調されてしまうこともあり、今後、お客様の作品を「商品」としてご紹介する機会が出て きた場合、それをごまかすわけではありませんが、より魅力的に撮影できる工夫も必要かと思います。

影は光源の反対側に出ますので、年輩の女優さんがテレビなどに出演される際、その方専用にカメラの方向から追加で照明を当て、シワなどを映りにくくすることがあるそうです。掛軸の撮影も、正面からまんべんなく光を当ててやれば、反りやゆがみは写りにくくなるのではないか、と考えて制作したのが先日の撮影用照明です。

当店の売り上げの半分以上はふすま・障子の張り替えですので、建具を立てかけるため、1.8メートルほどの高さに、壁面の保護のために30cmほどの幅で帯状に紙が貼ってあり、掛軸を撮影するためには邪魔でしたので、1年ほど前にひねり出したアイデアがこの「簡易撮影スタジオ(?)」です。

 店舗の入り口より見て左側の

NCM_0232コーナーの普段の状態です。

 撮影時には掛軸を移動させます

NCM_0231

コーナーは奥行き1メートルほどの物入れになっていて、ふすま・障子の施工時は、反対にこの物入れの前に掛軸を移動させます。

 「簡易撮影スタジオ」は‥‥、

DSCN2427スーパーの手芸用品売場で切り売りしていた、もっとも安かった布地、水道用の塩ビ管、角材と本体を吊り下げるフック、掛軸を吊り下げるフックで構成されています。

 コーナーに簡易撮影スタジオを

NCM_0243吊り下げます。

 先日作成した撮影用の照明を設置

NCM_0245軸装用以外の布地の知識がないので、購入した布地の素材や特製などは不明。若干縦じわが目立つので、ほかに適切な素材があったのかも知れません。

 掛軸を吊り下げ撮影します

NCM_0247

 撮影の様子

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撮影結果

先日撮影した照明の効果を検証してみます。オートでの撮影のためか、極端な差はありませんでした。

窓からの明かり

DSCN2414遠くからの光ですので全体にまんべんなくあたっている印象です。意外に悪くありません。

 室内の蛍光灯を点灯

DSCN2415天井の4箇所にある照明の内のひとつは、この写真の右上に移り込むほどの位置にあります。掛軸の右上が若干明るく写っています。

近距離斜め上方からの光ですので、影のためか、掛軸の反りや背景布地のシワが若干気になります。

 

 窓+蛍光灯+自作照明

DSCN2416窓+蛍光灯に比べ、影が飛ばされ、フラットな印象になりますので、「商品の写真」としては良い感じに写っているかと思います。

 窓+自作照明

全体がかなりフラットな感じで写っています。上下で色調の差が小さく感じますので、窓からの光源が確保できる状況であれば、 こちらの方が良いかも知れません。

窓からの光源が確保できない場合の撮影も試してみる必要はあろうかと思います。夜間しか撮影する時間が確保できないほど忙しくなれば良いのですが。

使用機材

Nikon E-5000ニコンのコンパクトデジカメのフラッグシップ機(発売当時)、E-5000にワイドコンバーター用のアダプターリングを装着して使用しています。

入手したときは既に型落ちで、オークションで約3万円で調達。それまで数千円の取引しかしたことがなかったので、現物が届くまではかなり不安でした。

奥行きの限られた店舗内で、縦に長い掛軸を撮影するのに必要と思い、ワイドコンバーターも同時期に落札しましたが、思い出せばフィルムカメラで撮影できていたので、このカメラでもワイド端の画角で十分でした。ワイドコンバーターは重く大きく、ねじ込み式で手間もかかるので、プライベートを含めほとんど活用されていません。十分な収入があるわけでもないのに、ロクに調べもせずに勢いでポチッとするのは反省しなければいけません。

最近はくたびれてきたためか、合焦しないこともままあり、まれに正常に起動しないこともあるので、そろそろ更新しなければいけないのかも知れません。

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