ご近所のお客様より紙本・絹本合計2点の仕立て直しのご依頼があり、そのうち1点の傷んでいた外題を複製して貼り付けさせていただきましたので、その作業を中心に仕立てた掛軸2点をご紹介させていただきます。
仕立て直しの仕事は、水分で糊を緩めて裏打ちを剥がし、作品だけの状態から新たに掛軸を仕立てます。仕立て直しのご紹介としては不手際ですが、お預かりした状態の撮影は失念しておりましたので画像がありません。
今回、お預かりしたうちの1点は紙本の「立ち雛」で、外題(題名など)は直接掛軸の裏側に墨で書かれておりました。そこには「大正十四年」との記述があり、お客様はそれを新しくした掛軸に直接貼って欲しいのとのご希望でしたが、いちばん外側で頻繁に触れる部分ですので劣化がひどく、実用に耐えられないと思われましたので、複製し、それを貼り付けさせていただくことをご提案いたしました。
写真は切り取ったオリジナルの外題部分です。
布地の紋様は四ツ割菱。紋様、色調ともお雛様に良く合っていると思います。
一文字に採用した多色で織られた金襴は表装用の生地ではなく、手芸用品売場で求めたもの。
一年以上前に求めたもの。当時は使う予定はなく、きれいな色でも作品や布地を選ぶ軸先と思いましたが、選択肢を広げるために求めました。お雛様と言う題材には良く合っていると思います。
同時にお預かりした絹本「山水風景」の掛軸もご紹介します
古い掛軸はわりと明るい色調の布地を使ってあることが多いですが、ある程度の濃さがあった方が、より作品が引き立つと思います。
普及品の生地の中には、残念ながら織りムラが目立つものもありますが、色調が作品に合うことを優先してお客様がこの生地を選択されました。柄は龍の紋様ですので水の風景を描いたこの作品に合っていると思います。