年配のお客様が、「二十歳の頃、母に作ってもらった」と言うお振り袖をほどいたものを持って来られ、思い出のあるものなので飾れるように、屏風に仕立てて欲しいとのご依頼を頂きました。
反物の一部です。図柄がほぼ赤一色ですので、この状態を見た時には、当店のセンスで格好良くできるか、若干不安になりました。
お客様とともに、反物を並べ、レイアウトを検討しているところです。こちらは表面にする予定の前身頃と後身頃。
こちらは両袖です。ベースにする鳥の子紙の色、フチも色もお客様に選んでいただきました。
屏風は、杉の骨に紙で下張りをするところから、当店で行います。金属の丁番でパネル状のものをつなぎ合わせると、通常180°までしか開きませんが、われわれ表具屋の作る屏風は、紙で特殊な丁番を構成しますので360°開くことができます。
通常は「焼け」の心配がありますので、表裏をきちんと区別しますが、両面を使うこともできますので、裏面を内側にして鑑賞することも可能です。
今回の場合、前身頃と後ろ身頃だけで表面がいっぱいになりましたので、袖を裏面に貼り、リバーシブルに使えるようにとのご希望でした。
完成した屏風は、大胆な模様でとても見映えのする屏風となりました。また、模様がつながりを考えて構成されていることに、大変感心いたしました。
わたくしは着物にはご縁がありませんので良くわからないのですが、着物というのは、呉服店では反物の状態で販売されているようですね。とすると、もともとは一枚の布であるわけです。それをこうして並べると、模様がつながります。反物の図案を考える方は色々工夫をなさってるのだろうと、大変感心させられました。
お客様自身で構成を考えられたと言っても、その時は反物の状態でしたので、板状にピシっと貼られたものはまた別の印象であったようで、「これで母も喜びます」と、たいへん喜んでいただきました。
お客様は、色々お忙しいようで、なかなかタイミングが合わずに納品まで時間がかかり、長期間お預かりすることとなりましたが、当店としては、その期間中にご来店された皆様に見ていただくことができ、大変ありがたいお仕事でした。